2016年11月2日水曜日

後見制度支援信託とは③

引き続き、後見制度支援信託について。

これまで述べてきたことと重複にもなりますが、成年後見制度を利用されている方で、どのような方がこの制度の利用に適しているのか、また、裁判所が審判するうえでの判断材料や要件を、簡単に挙げてみると次のようになります。

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1.成年後見人または未成年後見人を利用している
保佐人、補助人を利用されている方は、この制度は利用できません。

2.親族の方が後見人である
専門職後見人である場合、今のところこの制度の利用外となっています。

3.本人に一定額の金銭がある
目安としては、1000万円以上でしたが、500万円以上に緩和されている地域もあります。
不動産や動産は対象外となっています。

4.本人が遺言などで財産の使いみちを決めていない
本人が遺言などで財産の処分方法を決めている場合、“財産を信託する”ことは、本人の意思に反してしまわないか検討する必要があります。成年後見の制度は、本人のための制度ですので、本人の意思の尊重を最優先しようという趣旨が考えられます。

5.本人の居所が安定し、毎月の収支計画を立てられている状況である
入院中の場合などは、どこが本人の住まいになるかまだ不確かですし、介護施設への入居などの予定がある場合は大きな財産を動かす必要があるので、信託しない方がよい場合もあります。
また、日常的に使用する金銭は定期交付になりますので、毎月の収支の目途が立っていることも判断材料の一つになります。

6.その他、本人・後見人の個別的事情
本人の財産管理や身上監護に、親族間で意見の相違がある場合は十分に配慮が必要です。

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今のところ、上記がこの制度を利用するにあたっての判断材料と考えられますが、新しい制度な故、今後、変更されていく可能性は大きいと思います。


最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」(平成25年1月~12月)によると、平成25年の1年間でこの制度を利用された方は533人(信託した金銭の平均額は約3700万円)とあります。成年後見審判の申立件数約26000件のうち、親族後見人はおよそ42%とあるので、数値的にはまだ周知されていない状況でした。
とはいえ、平成25年12月時点では新規に後見申立をする際に限定された制度でしたが、それが緩和され、現在後見制度を利用されている方も利用できるようになったことで、今後は、利用に向けた動きがもっと加速していくと思います。

次回は、メリット・デメリットについて、そして、今後のこの制度の展望について考えたいと思います。